手巻き時計の正しい巻き方・使い方は?【腕時計の基礎知識】
機械式時計には自動巻き時計と手巻き時計があり、手巻き時計はゼンマイを巻き上げる感覚が魅力のひとつです。しかし、巻き方や使い方を間違えると時には壊してしまう原因のひとつになります。この記事では手巻き時計の正しい巻き方、使い方をご紹介します。
目次
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大人の魅力を引き出す手巻き時計!正しい巻き方
手巻き時計はゼンマイがほどけてくると自分で巻き上げる必要がありますが、その手間が魅力の1つでもあります。
毎日巻き上げることによって、使えば使うほどに愛着がわきます。
昔ながらのクラシックなデザインが多いため、流行に流されないデザインを求めている人にもおすすめです。
手巻き時計の巻き上げや時刻合わせには注意点があり、正しい巻き方や使い方をしないと最悪の場合時計を壊してしまう原因にもなります。
この記事では、手巻き時計の巻き上げ方法や取扱い方、使い方を一通りまとめています。
購入を検討している方や手巻き時計を持っている方は是非ご一読ください。
【動画で解説】手巻き時計の正しい巻き方と使い方
手巻き時計はただ巻けばいいというわけではなく、巻き方や使い方にコツがあります。
正しい巻き方をすることで、パーツの摩耗が少なくなり、結果修理の回数が減ったり長く愛用できるようになります。
「ぜんまい」の巻き方
竜頭を回すときは、必ず竜頭側の時計側面から見て右回りに回します。
そうすることで、ゼンマイがどんどん巻き上がり、カチカチと小気味いい音が鳴ります。
手巻き腕時計の巻き方ポイント
- 最初は必ず優しく回す
- 一回巻いて一回戻すを繰り返す
手巻き腕時計のゼンマイを巻くときは、最初は優しく回すことと巻いて戻すを繰り返すという使い方がおすすめです。
ゼンマイを巻くときに竜頭を逆方向に回しても、ゼンマイは緩みませんが、戻しすぎには注意しましょう。
ゼンマイを巻いてそこで指を離すと、歯車の溝にこはぜと呼ばれるパーツのツメが入ってパチンという音がします。
このときの歯車同士の反動の衝撃が積み重なると、歯車の摩耗に繋がります。
歯車は一度摩耗してしまうと交換以外の補修方法がありませんので、回すたびに指を離す使い方は初めのうちだけにしておきましょう。
初心者の巻き方
初めて手巻き時計を買ったという人は、一回竜頭を回したら指を離して竜頭をつまみ直してさらに巻くという巻き方がおすすめです。
カチカチとゼンマイが巻かれている感覚を知ることができます。
最初は少しゼンマイが硬いことがあるので、巻き終わりの感覚も覚えておきましょう。
慣れたらトライしたい巻き方
巻くのに慣れてきたら竜頭をつまんでゼンマイを巻いたあと、そこから指を離さずに少し逆方向に巻きます。
反対回しにしても歯車が噛み合っているためゼンマイが緩むことはなく、竜頭から指を離さなくていいので楽に巻けます。
時刻の合わせ方
手巻き時計の時刻の合わせ方は、竜頭を引いて回すだけで簡単に行うことができます。
右回りに回すと分針と時針も右回りに回るので、現在の時刻に合わせましょう。
また、竜頭は細い部品でムーブメントと繋がっているので、強引に引かないようにしましょう。
時刻を合わせる時の注意点
時刻を合わせるときもゼンマイを巻くときと同じく竜頭を回すときは必ず優しく行いましょう。
乱暴に回すことで内部のパーツが摩耗する原因になります。
手巻き時計の正しい使い方を紹介!8つのポイント
手巻き時計の使い方には注意しなければならないポイントがあります。
それぞれ小さなことのようですが、積み重なると故障につながるのでしっかりと正しい使い方をマスターしましょう。
防水機能を過信しないこと
時計を長持ちさせる秘訣のひとつに、水の侵入をシャットアウトすることが挙げられます。
時計内部は非常に繊細で微小なパーツの組み合わせでできています。
そのパーツのほとんどが金属製であるため、水分によって酸化しサビができると時計の劣化に繋がります。
今では日常生活防水や本格的なダイバー仕様のものまで、さまざまな防水仕様の腕時計があります。
特に気をつけたいのが日常生活防水程度のもので、汗や雨などの水滴を弾くレベルの防水機能であるということです。
防水表示を過信せず、できるだけ水を避けましょう。
振動や衝撃を与えないこと
時計のムーブメントは非常に微細なパーツでできていることから、衝撃や振動によってパーツの食い違いが起きることがあります。
特にゴルフなどのスポーツは、手首に思った以上の衝撃があります。
スポーツをするときは必ずスポーツ用のものを身に着け、そうでない時計はできるだけ衝撃を与えないよう優しく取り扱いましょう。
竜頭のロックを忘れないこと
竜頭と時計内部のムーブメントを繋げている部分は、細い棒状のパーツです。
竜頭のロックをし忘れた上に、時計に衝撃や思わぬ力が働くと竜頭が取れてしまう可能性があります。
また、竜頭をしっかりロックすることで水の侵入も防ぎます。
濡れた手で竜頭操作をしないこと
濡れた手で竜頭を操作すると、時計内部に水が入る可能性があります。
時計内部に水が入ると、パーツが腐食したり風防が曇って見にくくなったりと時計にとって悪影響です。
手を洗った後などは必ずハンカチやタオルで手を拭いてから、竜頭を操作しましょう。
巻き止まり以上に巻かないこと
手巻き式腕時計の場合は、必ず巻き止まりといってそれ以上巻けない限界があります。
この巻き止まり位置に来ても巻くのを止めなかった場合、ゼンマイが切れて時計が動かなくなります。
手巻き腕時計のゼンマイを巻くときは、巻き止まりまで巻くよりはその手前でストップするのが安全です。
ゼンマイを巻いているとどんどん手の感触が重たくなってくるので、そこからはゆっくり様子を見ながら巻き上げましょう。
針の逆走をしないこと
針を大幅に逆走させるとムーブメントに思わぬ負荷がかかることがあるため、逆走はできるだけしないようにしましょう。
時計回りに時刻合わせをして、現在の時刻に到達しそうになったら竜頭を回すスピードを遅くすると安心です。
磁気を発するものに近づけないこと
機械式時計の内部のパーツは金属製であるものが多く、この内部パーツが磁気を帯びることによって時計が止まったり精度が狂ったりします。
磁気を発生するものからは5センチ以上は離して、磁気帯びをしてしまった場合は修理に出して磁気を抜いてもらいましょう。
磁気を発生させるものの代表格はスマートフォン、パソコン、家電、女性用バッグや財布に使われているマグネットやがま口です。
近づけないように使うのが難しいと判断した場合は、耐磁性の時計の購入をおすすめします。
夜にカレンダーの日付を回さないこと
日付表示があるタイプの手巻き式時計の場合、日送り車という部品がついています。
この日送り車は24時間常に動いていますが、夜8時から明朝4時までの間に日付ディスクの数字を一個進めるよう日付ディスクと接触します。
そして、日付を人為的に竜頭で操作するために使われている早送り車という部品もあります。
この日送り車と早送り車が同時に動いてしまうと、それぞれのツメが割れてしまうことがあります。
デイト表示のある機会式時計の日付変更は日中に行いましょう。
手巻き時計の仕組みを解説
電池を使わず、ゼンマイの動力を使って時間を刻む手巻き時計は、どういう仕組みになっているのでしょうか。
ここでは手巻き時計が動く仕組みから竜頭の種類まで幅広く解説しています。
手巻き時計の動く仕組み
手巻き時計は、ゼンマイを巻いた後に解かれるときの動力で時計が動く仕組みです。
ゼンマイが解くときの動力が歯車や各パーツに伝わり、針が規則的なリズムを刻むように設計されています。
子どもがよく遊ぶゼンマイで動く人形と仕組み自体はほぼ同じです。
自動巻き時計との違い
自動巻き式時計にはローターと呼ばれるパーツが搭載されており、腕の動きによってゼンマイを巻き上げることができます。
自動巻きは高い精度を維持できる、時間が止まりにくいなどのメリットがありますが、ケースが厚くなりやすいという欠点もあります。
手巻き時計の竜頭(リューズ)の基本機能
時計の側部についている突起部分を竜頭(リューズ)と言い、この部分を使ってゼンマイを巻いたり時刻を整えたりします。
「ぜんまい」を巻く
竜頭をそのままの状態で回すと、ゼンマイを巻くことができます。
竜頭を回していると、だんだんと回すのに重たく感じてきます。
重くなったと感じたらそこからはゆっくり巻き、巻き止まりが来たらやめると丁度いい巻き加減です。
時刻を合わせる
竜頭をつまみ出して一段階飛び出た状態で回すと、分針が回って時刻を修正することができます。
なお、この操作方法はブランドやモデルによって違う場合があるので、説明書等でしっかり確認を行うようにしましょう。
時計による竜頭の違い
竜頭は時計によって使い方や性能が違うタイプがあります。
今回は、懐中時計や置き時計と言ったレトロな時計でよく見られる3タイプをご紹介します。
鍵巻き式
1900年以前に作られていた時計には、付属の鍵を使ってゼンマイを巻き上げたり時刻を修正するタイプのものがありました。
裏フタの内側、もしくは文字盤に鍵穴があり、そこに鍵を差し込んで回すことで時計を動かせるようになっています。
鍵巻き式は竜頭でゼンマイを巻いたり、時刻合わせをしたりしないため、竜頭がそもそもないか竜頭があっても操作できません。
また、鍵を差し込んで操作する場合、時計によっては左か右かわからないこともあります。
そのときは、カチカチと音がする方向に回しましょう。
剣引き・レバー式
側面にある小さなレバーを引いて竜頭を操作するタイプを剣引きやレバー式と言います。
現在も数は少ないですが同じ構造の時計があり、懐中時計やアンティーク時計といった古いものに良く見かけるタイプです。
剣引きやレバー式は、その名の通り剣を引くときのように操作して使います。
時計側面に爪楊枝の先端ほどの細さの突起があれば、それを引っ張って竜頭を回すと時刻を変更できます。
レバーはとても細くて繊細なので、乱暴な使い方はやめましょう。
ダボ押し・ボタン式
竜頭を回してゼンマイを巻き上げ、時刻合わせのときはダボという側面のボタンのような部分を押しながら回すタイプの竜頭をダボ押しやボタン式と呼びます。
ボタンは爪の先を使えば押し込めるものがほとんどです。
時計を固定しながらボタンを押し、もう片方の手で竜頭を操作する使い方がおすすめです。
こういったダボ押しやボタン式構造の時計は1900年以前の20年程度の短い期間のみなので、今現在ではダボ押し式はほとんど見かけることがありません。
なぜ手巻き時計は同じ時間に巻かないとダメなのか?
手巻き時計はパワーリザーブギリギリまで使うよりも、毎日同じ時間に巻くのがベストとされています。
最後に、同時刻に手巻き時計を巻くべき理由について解説します。
時間が狂うのを防ぐ
手巻き式の時計を毎日同じ時刻に巻くべき最たる理由は、精度を安定させて時間が狂ってしまうのを防ぐためです。
ゼンマイが解けるときの駆動力はいつも一定ではなく、巻き加減で少しずつ違っています。
巻き加減別の精度の違い
- ゼンマイを最後までしっかり巻く -2秒
- ゼンマイを半分程度巻く +4秒
- ゼンマイを少しだけ巻く -7秒
手巻き式ムーブメントは、ゼンマイの巻き加減で精度に偏りがあります。
ゼンマイをしっかり巻いたときとゼンマイを少し巻いたときでは、ゼンマイを解こうとするときの原動力が違ってくるからです。
メーカーは24時間に1回を推奨
毎日違う時間帯にゼンマイを巻いていると、「今日は4秒遅れて明日は7秒進んだ」というようにどんどん時刻が狂い精度が落ちていきます。
パワーリザーブが48時間とたっぷり時間がある場合でも、毎日同じ時刻に巻くことで安定した精度で腕時計を使うことができるのです。
手巻き時計は正しい巻き方で長く愛用しよう
手巻き時計の正しい使い方は非常にシンプルですが、間違った使い方を積み重ねると修理の回数やメンテナンスのしやすさに差が出てきます。
ゼンマイの動力のみでリズムよく時刻を刻む、独特の魅力ある手巻き時計を大切に使うには毎日の使い方がポイントです。
手巻き腕時計は伝統工芸品としての魅力もあり、その繊細な仕組みに惚れ込む人は今も多くいます。
時計職人のクラフトマンシップを存分に感じられる手巻き腕時計の正しい使い方を覚えて、長く時代を超えて愛用できるようにしましょう。
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この記事のライター
Rich-Watch編集部
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