ヒゲゼンマイって何？仕組みや意味を徹底解説！

機械式腕時計には、普段聞き慣れないヒゲゼンマイという部品があります。

ヒゲゼンマイとは時計の精度を決める極めて重要なパーツです。

この記事では、ヒゲゼンマイの意味や仕組みについて解説します。

さらに、新素材シリコンを採用したヒゲゼンマイを搭載する腕時計も紹介していきます。

まずは、ヒゲゼンマイの種類について見ていきましょう。

ヒゲゼンマイの種類は主に3つあります。

オランダ人数学者クリスティアン・ホイヘンスによって1675年に発明された平ヒゲは、ヒゲゼンマイの中でも高低差がなく渦巻状に巻かれたもっとも単純なものです。

生産が簡単かつ高さが出ないので、現在最も主流となっています。

巻上げヒゲは時計技師アブラアン・ルイ・ブレゲによって発明されたヒゲゼンマイであり、ブレゲヒゲとも呼ばれています。

巻上げヒゲは、ヒゲゼンマイの巻きの最後の外端部分が持ち上げられて内側に向けた形状をしています。

ほぼ同心円状に運動するため、姿勢差が軽減できるのがメリットです。

縦方向に巻かれたヒゲゼンマイをちょうちんヒゲと呼びます。

水平方向に巻かれたヒゲゼンマイと異なり、厚みを持ってしまうため現代の腕時計にはほとんど採用されていません。

航海用のクロノメーターとして利用されていた時代もありました。

ヒゲゼンマイは、機械式腕時計のムーブメントのテンプを構成するパーツのひとつです。

ヒゲゼンマイが伸縮することで、テンプは駆動し正確な時を刻みます。

ヒゲゼンマイはテンプの中心にある天真に固定され、先端にはヒゲ持に固定されています。

両端を固定されたヒゲゼンマイがバネのように伸縮することで、テンプが左右に振幅運動します。

この振幅運動によって機械式時計は動きます。

振幅運動(振り子)は振幅が変わっても周期は変わらない習性を持っています。

しかし、振り子自体が振動してしまうと周期が変動して時刻が狂う原因になります。

テンプはヒゲゼンマイによって起こる振幅運動を安定させ、規則正しく時刻を刻む役割を持っているのです。

時計はテンプの均等に動く振動によって時を刻みます。

したがって、テンプを動かすヒゲゼンマイは時計の精度を決めるうえで非常に重要です。

その時計の精度を高めるという要求に応えるために、ブレゲヒゲやシリコン製のヒゲゼンマイが開発されてきました。

ここまでヒゲゼンマイの仕組みを解説しましたが、生産するのが非常に難しいパーツであるがために供給しているメーカーは少ないです。

ここでは、ヒゲゼンマイのメーカーや近年増えているシリコン製ヒゲゼンマイについて紹介します。

ヒゲゼンマイを自社で製造しているメーカーは少なく、スウォッチグループに属するニヴァロック社製が90％以上のシェアを占めているのが現状です。

スウォッチグループのブレゲ、ブランパン、オメガをはじめスウォッチグループに属さないメーカーにもヒゲゼンマイを供給しています。

完全マニュファクチュールで自社製のヒゲゼンマイを利用しているメーカーもあります。

スウォッチグループに属さない企業の中でもおもに、ロレックス・LANGE＆SHONE・セイコーなどはヒゲゼンマイを自社で開発しています。

ロレックスは2005年にパラクロムという合金の材質で作られたヒゲゼンマイを開発しました。

ブルーパラクロムヒゲゼンマイはきれいな青色をしたヒゲゼンマイで、上画像のムーブメント上部部分のテンプ内にあります。

材質の特性から温度変化に強く、耐磁性にも優れます。

一般的にヒゲゼンマイは金属製ですが、シリコン製は金属のデメリットを解消してくれます。

その一方でシリコンにもデメリットはあります。

ここではシリコン製ヒゲゼンマイのメリットとデメリットについて解説します。

シリコンは時計を狂わせる原因となる磁気に強く、金属よりも軽く重力による変形もしにくい材質です。

さらに、衝撃や腐食に対しても耐性が優れているというメリットがあります。

シリコン製ヒゲゼンマイのデメリットのひとつは、ゼンマイのような曲線に仕上げるのが困難だということです。

もうひとつは、シリコンは吸湿性が高く湿気に弱いということです。

これらを克服するために、各メーカーやブランドは製造工程の見直しや構造の工夫などを行っています。

ここからは、シリコン製ヒゲゼンマイを採用している腕時計を紹介していきます。

シリコン製ヒゲゼンマイを使った人気腕時計4選を表にしましたので、ご参考にして下さい。

腕時計の中で振り子のような役割を果たすヒゲゼンマイは、精度を向上するために多くのメーカーが苦心しています。

時計選びをする際には、時計技師たちのクラフトマンシップを感じさせるヒゲゼンマイに注目して選んでみてください。

2020/9/16調査