19セイコーの歴史や当時の価格は?オーバーホールや人気モデルも!
国内ブランド初の鉄道時計に選出された19セイコー。質実剛健な機能性と高い視認性があり、メンテナンスすれば半永久的に使えることから多くの個体が現存しています。昭和初期から中期まで生産された19セイコー、その魅力について詳しくご紹介します。
目次
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"19セイコー"について知っておくべきことは?
日本の鉄道時計を語る上で欠かせない存在である19セイコー。
生産終了から50年近く経過した今でも、現存している19セイコーは中古販売店やオークションサイトなどで取引されています。
今回は19セイコーの魅力や知っておくべき歴史、モデルチェンジの変遷などを解説します。
アンティークウォッチとしても人気の19セイコーの魅力を深堀りしてみましょう。
"19セイコー"の知っておきたい歴史
国産の懐中時計の中でも最も有名で人気が高いのが19セイコーです。
「19」は当時舶来懐中時計のムーブメントサイズから命名されたもので、19セイコーもそのサイズを元に作られています。
まずは19セイコーのこれまでの歴史について解説します。
国産初の鉄道時計に選ばれる
19セイコーは昭和4年から昭和46年まで精工舎(現在のセイコー)で製造されていた懐中時計の総称です。
昭和4年の4月に発売開始後、11月に国内時計ブランド初の鉄道時計に選出されました。
鉄道は時刻に正確に運行することが事故防止のために重要です。
そのため19セイコーが鉄道時計に選ばれたのは、その信用に足る精度があることを意味します。
それまではオメガやウォルサムといった海外製の舶来懐中時計を使っていましたが、セイコー創業者の服部金太郎氏の情熱によって完成したのが19セイコーです。
7石と少ない石数にも関わらず、安定性と堅牢性が高いことから鉄道時計としての信頼を得ていました。
戦時中は軍用時計としても活躍
19セイコーは堅牢性に優れていることから、戦時中は軍用時計としても活躍しています。
初めて発売された19セイコーは7石のムーブメントで精度も高くありませんでしたが、昭和9年頃からは15石のものも登場。
同時に攻撃を仕掛ける際などで使用されました。
戦地でも昼夜がわかりやすいように、24時間表記のものも昭和17年頃から続々と発売されています。
戦後復活し長年のロングセラーに
戦後も昭和20年からすぐに製造が開始された19セイコーは、鉄道用としてだけではなく電話交換手用としても活躍します。
また指で揺れて時間がわかる盲人用タイプも発売されていました。
この盲人用は戦時中に失明した重傷の軍人のために開発されたものなので生産数が150個程度と推測されており、非常に少なく貴重です。
その後はさまざまなタイプやムーブメントの性能アップを経て昭和46年まで生産しています。
現在は鉄道時計はクォーツを使用しているので、機械式である19セイコーは昭和46年より以前に製造されたものだけです。
"19セイコー"の販売当時の価格はいくら?
昭和4年発売当時の19セイコーの7石タイプは14円5銭と設定されており、現在の貨幣価値に換算すると92,000円ほどです。
その後昭和6年にRAILWAY WATCH(鉄道時計)として7石タイプを19円50銭で販売しています。
精度の高い15石タイプは27円5銭で、現在販売されている機械式の価格を考慮するとかなり安価で発売されていました。
なお軍用時計として便利な24時間表記の19セイコーも同じ価格です。
"19セイコー"のオーバーホールについてのQ&A
ここで19セイコーのオーバーホールや修理に関するQ&Aを見てみましょう。
19セイコーは昭和46年以前のものしか現存していないので、状態が悪いものも多く出回っています。
ヴィンテージものを買う場合は、事前にメンテナンスできる最寄りの時計店を調べておきましょう。
オーバーホールすれば精度が上がる?
- オーバーホールすれば精度が上がる?
上がります。全く動かない状態の19セイコーでも、オーバーホールで動くようになるケースもあります。しかし19セイコーはゼンマイが大きく、駆動する力が強いのでパーツの磨耗も激しいです。もし今後大事に使っていきたいならば、こまめに時計店へメンテナンスを依頼、汚れをとって注油してもらいましょう。時計店によってはヴィンテージの19セイコーでも修理可能なところはあります。パーツ在庫がない場合は修理不可なので、1からパーツ作成ができる修理店がおすすめです。
風防が壊れても修理できる?
- 風防が壊れても修理できる?
できます。風防はサイズと形状が一致していれば交換可能です。風防の在庫がある時計店であれば、すぐ対応してくれます。19セイコーの場合は価格が安いプラスチック素材なので、交換料金は6,000円程度が目安です。19セイコーは修理に対応できる修理店が限られるので、事前に見積を依頼しましょう。できれば家電量販店ではなく、懐中時計の修理実績がある時計修理を専門に行なっている業者がおすすめです。
"19セイコー"の定番人気モデル3選
19セイコーはマイナーチェンジをしながら長きに渡って生産されてきた懐中時計ですが、ここではその中でも定番とされてきたモデルをご紹介します。
なお以下のモデルは在庫があれば中古でも購入できる可能性があります。
Yahoo!オークションや中古の取り扱いがある時計店でぜひチェックしてみてください。
7石19セイコー 青針モデル
こちらの19セイコーは7石タイプのモデルで、スモールセコンドにイエローのマーカーが施されているのが特徴です。
スモールセコンドをひと目見ただけでも秒がわかりやすく、シンプルな文字盤をよりおしゃれに引き立てます。
また鮮やかな青い針はオフホワイトのダイヤルに映え、針の位置が見えやすく工夫されています。
インデックスはブレゲ数字と呼ばれるアラビア数字フォントを採用しており、やや立体感があるので視認性は抜群です。
手巻きムーブメントにはコート・ド・ジュネーブ装飾が施されており、シースルーバックから見たときの美しさにも定評があります。
価格(楽天) | ‐ |
ケース径/厚 | 50mm/14mm |
ケース素材 | 真ちゅう(クロームメッキ加工) |
風防素材 | プラスチック |
ムーブメント | 手巻き(7石) |
15石19セイコー 青針モデル
こちらは昭和36年に生産された青針採用モデルの19セイコーです。
19セイコーは実際に国鉄で使われた後やモデルチェンジ後に廃品マークをつけて払い下げ品として出回っているものがたくさんあります。
この個体もそのタイプで、裏面に廃品マークが刻まれているのが特徴です。
昭和35年に15石に改良されたCal.9119が搭載されており、精度も向上。
現在でもきちんとメンテナンスをすれば長く使用できるロングセラーモデルです。
価格(楽天) | ‐ |
ケース径/厚 | 50mm/14mm |
ケース素材 | 真ちゅう(クロームメッキ加工) |
風防素材 | プラスチック |
ムーブメント | 手巻き(Cal.9119) |
15石19セイコー 9119-0030T
このモデルは昭和39年以降に発売された19セイコーです。
裏面には「日本電信電話公社」(現在のNTT)と彫られている通り、この個体は電話交換手用として使われていました。
スモールセコンドには20秒ずつ山吹イエローの差し色が入っているので視認性がよく、ひと目で秒までわかりやすく工夫されています。
このモデルはリューズを引くと秒針が0の位置まで進み、そこで止まってリューズを押すと動き出す機構を採用。
時間合わせが簡単にできる独特の機能性は、鉄道時計ならではです。
また昭和38年以降から採用されている後期モデルの特徴のひとつ、丸型の丸環が特徴です。
価格(楽天) | ‐ |
ケース径/厚 | 50mm/14mm |
ケース素材 | 真ちゅう(クロームメッキ) |
風防素材 | プラスチック |
ムーブメント | 手巻き(15石) |
"19セイコー"の定番人気モデル比較表
ここまでご紹介した19セイコーの代表的なモデルについて一覧表にまとめました。
ひと目みただけでは違いがわかりづらいですが、使いやすいように少しずつモデルチェンジを行っていることがわかります。
裏側の刻印は個体によって違うので、好みのものが欲しい場合は裏側の画像も確認しましょう。
"19セイコー"の知っておきたい3つの種類
19セイコーは生産終了するまでいくつかマイナーチェンジを行っています。
その中でも19セイコーの変遷がわかる3タイプをご紹介。
19セイコーが歩んできた歴史や変遷がわかると、より愛着がわきます。
①戦後モデル:7石 オキュパイド19セイコー
こちらの19セイコーは昭和20年10月、戦後すぐに製造が開始されたモデルです。
戦時中は軍用時計としても活躍していた19セイコーですが、昭和20年8月に戦争が終結すると軍需工場閉鎖によって一時的に生産中止になります。
その後すぐ民需工場として生産開始されましたが、当時の資材は戦時中に支給されたもの。
ケースに傷、ダイヤルは焼けがありますが、メンテナンスをすれば未だ精度高く駆動してくれる名品です。
なおオキュパイドは「占領」を意味し、アメリカの占領下だった期間に製造されたことを意味します。
②戦後モデル:15石19セイコー
こちらは戦後の昭和35年頃に製造された19セイコーで、スモールセコンドがシルバーカラーなのが特徴。
上記の画像ではわかりにくいですが、針はブルースチールで文字盤はオフホワイトです。
シースルーバックから見えるムーブメントにピンク色の石が使われている場合は15石以上、透明なものは7石に設定されています。
なお戦前モデルとの違い、ダイヤルの下部分には「JAPAN」の表記を追加しています。
昭和34年からはブランドロゴも「SEIKOSHA」から「SEIKO」に変更、よりすっきりとしたダイヤルになりました。
③後継モデル:17石・21石19セイコー
こちらは19セイコーではありませんが、19セイコーのスペックを受け継いで鉄道時計として活躍した後継機です。
19セイコーは後期モデルからリューズ部分が玉ねぎ形状から丸型になりましたが、この後継機にも受け継がれました。
ムーブメントも大きく進化しており、19セイコーは出車式を使ったスモールセコンドタイプから本中3針式に変更。
出車と呼ばれるパーツを使用せずに秒針を動かしたことで、摩耗しにくくなりました。
またムーブメントの装飾も19セイコー生産後期によく見られるマットタイプを採用していいます。
歴史ある"19セイコー"は手にしたい時計の一つ
19セイコーは精度が高い国産の鉄道時計として認められ、時間通りに運行する日本の鉄道の歴史には欠かせない存在です。
現在でも19セイコーのデザインを受け継いだクォーツ式の懐中時計が、鉄道会社にて実際に使用されています。
19セイコーのみならず、懐中時計は今ではなかなか見かける機会がありません。
昭和初期から中期にかけて生産された非常に貴重な19セイコー、見かける機会があればレトロな見た目や機械が時を刻む音を楽しんでみてください。
クォーツやデジタルウォッチにはない魅力を再発見してみましょう。
2021年8月16日調査
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この記事のライター
Rich-Watch編集部
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