クォーツ時計の仕組み(構造)を解説!性能やメリットデメリットは?
クォーツ時計は水晶を構造内に組み込んだ時計です。クォーツ(水晶)の電気で起きる高速振動をムービング構造の仕組みに活用した時計です。機械式時計より丈夫で安く、仕組み上ゼンマイを巻く必要もありません。しかし寿命は機械式時計より短く、メンテナンスが長持ちのコツです。
目次
クォーツ時計はどんな仕組みで動いているの?
クォーツ時計と呼ばれる時計があります。クォーツとは水晶のことなので、水晶が使われているのだろうと想像できますが、詳しくはあまり知られていません。
クォーツ時計はどんな仕組みで動く時計か、時計の構造や仕組みに触れ解説します。
またクォーツ時計の電池交換の方法やメンテナンス、寿命や長持ちさせる方法などをご紹介します。
クォーツ時計の仕組みと構造
クォーツ時計は構造の中に水晶と同じクォーツという物質を組み込んで動く時計ですが、
いったいどんな仕組みで、水晶が時計を動かしているのでしょうか。
水晶が使用されている時計構造
クォーツ時計のクォーツは石英を指し、石英は二酸化ケイ素の結晶で水晶と同じ結晶構造を持っています。
石英の中でも自然結晶を持つ希少なものを水晶と呼び、透明な六角柱の結晶です。
宝石やパワーストーンとして扱われるいわゆる水晶の結晶は、アクセサリーや念珠、占いなどにも使用されるので、世間的にとても身近な鉱物です。
クォーツ時計には純度の高い、特殊なカットを施した二酸化ケイ素の結晶を使用しています。そのため、クォーツ時計と呼ばれています。
なぜ水晶(石英)を時計の構造の中に組み込んでいるのかというと、水晶は不思議な特徴と、数学的に奇跡的な振動数を持つ鉱物だからなのです。
水晶には圧電効果の仕組みがある
水晶は圧電効果と呼ばれる特徴を持っておりこの特徴は水晶やセラミックの一種にみられるもので、水晶がクォーツ時計の仕組みに使用されている理由のひとつです。
圧電効果の仕組み・構造とは
圧電効果は圧電効果と逆圧電効果の総称です。圧電効果は、水晶や特殊なセラミックに圧力を加えると、電圧が発生するという現象です。
圧力を加えると、物質にひずみが生まれそれに応じて電圧が発生します。
(+)イオンが(-)イオンを取り囲み、中心に(+)イオンが存在し圧力をかけると中心部分にある(+)イオンが移動し、他のイオンとの間にズレが生じます。
ズレが生じることで結晶の一端が(+)の電気、一端が(-)の電気を帯びます。ひとつの結晶で電極が分かれることで、電圧が発生します。
圧力(押す力)とは逆に、引っ張る力(張力)を加えると、圧力をかけた時とは(+)の一端と(-)の一端が逆になります。
この(+)と(-)の交代現象を、圧電効果と呼びます。
水晶が振動する構造
水晶は圧電効果を持っている物質なので、圧電体と呼ばれ、圧電体は曲げて変形させることでも、(+)と(-)の電気が発生する面が逆になります。
交流電圧を加え(+)(-)の電気を交互に加えると、伸び縮みを繰り返します。
これを逆圧電効果と呼び、圧電効果と逆圧電効果をまとめて圧電効果と呼んでおり、伸び縮みが高速で起きると振動になります。
32,768ヘルツの振動
水晶は電気を加えることで、1秒間に32,768回振動します。水晶の振動のような、波状の動きのことを周波数と呼び、1秒間に何度振動したかをHzという単位で表します。
クォーツ時計に使用されている水晶振動子のクォーツは、32,768Hzの振動数です。
32,768は、2の15乗の数です。2を15回かけると32,768になります。2の15乗なので、2進法で振動を測るカウンターなら15桁でちょうど1秒になります。
16桁になると次の1秒がスタートし、16も2の4乗にあたるため、とてもキリがよく、正確に1秒間が測れる数ということが分かります。天然水晶だと不純物が混ざり正確な周波数ではないことがあります。
クォーツ時計に使用されている部品
クォーツ時計には、クォーツ(水晶振動子)以外にも、さまざまな部品が使用されています。 電池は時計を動かすエネルギーである電気を提供します。クォーツ時計といっても、仕組みを動かしているのは電気の力です。
- 電池
- IC回路ブロック
- ステップモーター
- 輪列
IC回路ブロックは3部分に分かれ、発振部は水晶振動子とICチップ、抵抗やコンデンサーなどからできています。クォーツを振動させ、安定させ調節する部品です。
分周回路は水晶振動子が起こす32,768Hzの振動を1秒に1回の信号に置き換えます。
駆動回路は分周回路から伝わる信号の力をステップモーターを動かすために強め、ステップモーターへと伝えます。
ステップモーターは駆動コイル・ステータ・ロータ(永久磁石)などの部品でできており伝えられた駆動信号を回転運動に変えたり、駆動コイルとステータで電磁石を作ったりしてロータを回転させます。
ロータの回転がいくつもの歯車に伝わり、秒針や分針、時針を動かし、電池→IC回路→分周回路→駆動回路→ステップモーターと力が変換され時計を動かしています。
クォーツ時計の性能
クォーツ時計はリューズを回してゼンマイを巻くタイプの時計とは、まったく違った仕組みで動くため性能にも違いが出るので、クオーツの優れた性能についてご紹介します。
クォーツ時計の誤差の仕組み
クォーツ時計の最大の特徴は、時間の精度が非常に高いという点で、一般的なクォーツ時計の誤差は1ヶ月で20秒前後です。
水晶振動子は真空管のような容器の中に、音叉の形の水晶が封じ込められており、音叉型の水晶は、驚くほど小さく米粒と比較しても、米粒が巨大に見えるほどに小さな水晶が、クォーツ時計の心臓として働いています。
クォーツ時計に使用されている水晶は、衝撃や姿勢の変化による影響を受けにくいというメリットを持っています。外的刺激による変質も少なくて済みます。
また電池がエネルギー源なので電圧が安定しており、長期間時間の精度が保たれるという特徴もあり精度・強度に対する信頼度が高い時計です。
ゼンマイ式時計の誤差は
機械式時計は1日に数秒の誤差が出るものがほとんどでクォーツ時計は1ヶ月に20秒程度の誤差が一般的なので、かなりの違いと言えます。
クォーツ時計ではないゼンマイ式(機械式)の時計の心臓部には、水晶の代わりにテンプと呼ばれる部品が使用されています。
しかし水晶が電気で振動する原理を利用したクォーツ時計は、テンプの数千倍の速さで振動するため、テンプを利用した機械時計の抱えている問題を解消できます。
クォーツ時計に使用されている水晶振動子は、1秒間に32,768回振動し、この高速振動がテンプとゼンマイの限界を超える分岐点になります。
電波時計にもクォーツ使用
電波時計は標準電波の送信局から送られてくる電波によって、時間を調節できる画期的な時計です。
電波時計は自動的に電波を受信する仕組みになっており、自動的に時間や日付の修正が行われ、本来人の手で行われる修正が、毎日自動で行われるため大変便利な時計です。
また電波時計でありながら、クォーツ時計でもある時計もあります。標準電波は常に発信されており、電波時計が受信するのは、時計の仕組みに組み込まれた時刻だけ、1日1回です。電波を受信していない時間は、クォーツ時計として動きます。
電波クォーツ時計は、クォーツ時計の非常に高い精度を、電波時計の仕組みでさらに毎日調整するためより正確な時計です。
クォーツ時計のメリット・デメリット
優れた仕組みを持ち丈夫な構造でしかも大量生産ができるという、優れたクォーツ時計にはいろいろなメリットがあります。
しかし手巻時計、自動巻時計にはないデメリットも存在しますので、クォーツ時計のメリット、デメリットをそれぞれチェックしました。
クォーツ時計構造上のメリット
- 置きっぱなしにしてもゼンマイを巻かなくても止まらずに動き続ける
- 機械式の時計に比べ衝撃に強く値段も手ごろ
機械式の時計は、自動巻時計と手巻時計に分かれます。時代的には手巻時計の方が古く、その後自動巻時計が開発されました。
手巻時計は毎日自分でゼンマイを巻き上げ自動巻時計は腕の新道で振り子が駆動し動き、そのまま放置しておくと止まってしまいますが、クォーツ時計は放置していても止まることがありません。
またゼンマイをはじめ髪の毛レベルの細い部品も存在する機械式時計は非常に繊細で、着けたままで時計に衝撃が加わるスポーツをして壊れた例があります。
クォーツ時計は衝撃に強くできておりまた日本とスイスで主にクォーツ時計の心臓部は作られていますが、生産や調整に手作業が多い機械式時計と異なり、工場での量産が可能で安価に大量生産が可能になります。
クォーツ時計構造上のデメリット
- 電池が消耗しても自分で交換することは難しい
- 時計の寿命が機械式よりも短い
クォーツ時計は電池で動いており時刻を調整する働きや針を回す働きは水晶の特製が担っていますが、元々のの電力を供給しているのは電池で電池は消耗品なので、切れると交換しなければなりません。
クォーツ時計の電池交換は非常に難しく時計修理店や時計販売店、メーカーの他にホームセンターや家電量販店にお願いしましょう。
また電池を交換しても、時計自体の寿命が短いというデメリットもあり、機械式時計は手巻でも自動でも数十年という長い寿命を持っており、オーバーホールすれば50年近くも使い続けることができます。
しかしクォーツ時計の構造上時計自体の寿命が短いので、昔の映画に出などに出てくる「懐中時計を子や孫に託す」といった長く受け継ぐ事ははなかなか望めません。
クォーツ時計の寿命は?
『大きな古時計』という童謡があります。時計には、まさに時を超えて受け継がれるというイメージがあります。ではクォーツ時計の寿命はどれくらいなのでしょうか。
クォーツの腕時計仕組みは10年の寿命
クォーツ時計の寿命は、だいたい10年前後です。電池が切れてプロに交換してもらったとしても、ムーブメント自体は10年前後で完全に止まってしまいます。
クォーツ時計の電子回路には、時計の構造上の心臓ともいえる水晶振動子も組み込まれており、とても小さな仕組みというだけでなく非常に繊細な機械です。
クォーツ時計も時計の一種なので、仕組みの中にはいろいろな歯車が使用されており、歯車は金属でできているため滑りをよくするために潤滑油が使用されます。
経年劣化した潤滑油がつまったり固まったりすると歯車がスムーズに動かなくなり、時計の力は歯車を通じて影響しあっているため、それぞれの精密部品や仕組みに負担が加わって、最終的に電子回路に打撃を与えてしまいます。
電子回路の交換は高額
クォーツ時計の心臓とも言える仕組みである、電子回路の交換はあまり行われることは無く、一流ブランドが販売している高級時計の場合は部品が残っていれば電子回路交換に応じてくれることもありますが、非常に高価です。
電子回路は小さく複雑な構造で回路交換は難しい修理になり、クォーツ時計は機械式時計と比べて安価な分壊れてしまったら寿命と考えることが一般的な考え方です。
クォーツ腕時計を長く使用するには
クォーツ時計は機械式時計と比較して寿命が短いとはいえ気に入っている時計や大切な人から贈られた時計などは少しでも長持ちさせたいもので、クォーツ時計の寿命を少しでも長持ちさせるためにはオーバーホールを行うという方法があります。
オーバーホールの目安
クォーツ時計を長持ちさせるためのオーバーホールは、時計を分解し古い潤滑油で汚れた歯車などの部品をきれいにし、新たな潤滑油を注入するなどの処置を行います。
電池が古ければ電池の交換も行い、クォーツ時計のオーバーホールは約3~5年に1度の頻度が目安になり、機械自体が10年ほどの寿命ということを考えに入れて、時計が不調を訴え始める前にオーバーホールに出すと良いでしょう。
オーバーホールに必要な費用目安と期間
クォーツ時計の寿命を少しでも伸ばし大切に使い続けるためには、オーバーホールがポイントになるので気になる費用と期間を調べました。
オーバーホールに必要な費用目安
オーバーホール費用は国産時計であれば5,000円~が基本でオーバーホールの費用は時計によって違い、高級海外製腕時計は2万円以上かかることもあります。
クォーツ時計の心臓部であるムーブメントを交換すると、高級時計の場合数万円かかり、オーバーホールにもかなりの費用がかかるのではと不安になるでしょうが、実際には時計によって異なり安価に上がる場合もあります。
クォーツ時計は今や100円ショップでも売っている時代で、しかもデザインもこだわっていて時間の誤差も少なく普通に使うことができる品質です。
そういった安価な時計の場合はオーバーホールをするよりも、使い切りで新たなものを買った方がはるかに安くすむでしょう。
しかし高級腕時計の場合は、オーバーホールで寿命を延ばすことが可能です。
異常を感じたら早めにオーバーホールを
クォーツ時計は精密機器で工場で大量生産されていて安く売っているものもあるといっても、高級な時計は構造も非常に精緻です。
特に温度変化にはあまり強くなく、気温差などの影響で潤滑油が普段よりも早く劣化する可能性もあります。
また、クォーツ時計は磁力に弱いというウィークポイントを持っています。
磁器ネックレスなどに触れると誤差や停止などの不調が生じることがあり、更にあまり丁寧に使っていなかった場合など、一般的なクォーツ時計の寿命である10年を待たずに、数年程度で不調が出てくる恐れがあります。
オーバーホールは3~5年に1度と言われていますが、使い始めて異常を感じた場合おかしいと感じた時点で時計修理店へオーバーホールを依頼した方が良いでしょう。
オーバーホールに必要な期間
- 潤滑油のケア
- 汚れ落とし
- 汗による錆のケア
- ネジゆるみの確認
- 内部の腐食
- 防水性の高さ
- 電池が切れていないか
クォーツ時計のオーバーホールには、だいたい1ヶ月程度の期間が必要で修理店が混んでいれば、もう少し長く待たされる可能性もあります。
精巧であればあるほどオーバーホールにも細心の注意が必要になるため、期間は長くなることが一般的ですが長持ちのためには欠かさず行いたいものです。
オーバーホールでは、心臓部のクォーツムーブメント部分、IC回路部分には触れずにたくさんある歯車とその潤滑油の劣化、汚れの蓄積などをチェックして、ひとつずつきれいにしていきます。
防水仕様のものでも内部に腐食があったり、錆などが生じている場合、長期間の使用で部品がすり減っている場合があるので主に以下に示すお手入れを中心に行います。
電池が切れれば動かなくなりますが、そのまま放置しておくと電池の液漏れの原因になり電池から漏れる電解液は刺激物です。
まだ異常の無いムーブメントに触れると破損の原因になるので、注意が必要です。
繊細な手入れを行うためオーバーホールには時間がかかり、そのことを念頭に置いてオーバーホールに出すようにしましょう。
こまめなメンテナンスでクォーツ時計を大事に使おう
クォーツ時計を長持ちさせるためには、毎日外したら汚れをきれいに拭き取る、3年前後に一度オーバーホールに出すなどのお手入れが大切です。
クォーツ時計は、機械式時計と比べて寿命は短めですがお手入れ次第で長いお付き合いも可能になるので大切な腕時計なら、こまめなメンテナンスで大切に使いましょう。
2020年10月25日調査
この記事のライター
Rich-Watch編集部
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